
学会長 江草 典政(島根大学医学部附属病院)
本学会は、中国地区5県の理学療法士が一堂に会し、臨床、研究、教育における知見を交換し、理学療法の発展と社会的価値の向上に貢献してまいりました。近年、日本理学療法学術大会が専門分野ごとに組織化される中で、本学会は多様な領域の叡智を結集し、総合的な視点から課題を議論する「知の融合」の場として、その重要性を一層増しています。
現代において、理学療法は障がいのある方の機能回復に留まらず、疾病予防、労働者の健康増進、そして地域づくりに至るまで、その役割を大きく広げています。これは、私たち理学療法士の専門性が、人生のあらゆるステージに寄り添い、人々の幸福に貢献できる可能性を秘めていることの証左であり、まさに「社会全体の処方箋」となり得る存在であると確信しております。
今回の学会のメインテーマは「明日への約束」と掲げました。 私たちの活動領域が広がるにつれ、臨床現場で向き合う個々の課題から、組織や地域、さらには法制度といったマクロな課題まで、多くの会員が複雑で多様な課題に直面されていることと拝察します。しかし、どのような大きさの課題であれ、それを乗り越えた先には、対象者一人ひとりの、そして地域社会の「豊かな未来」が広がっているはずです。
本学会を参加者ひとりひとりが自らの地域の課題を深く見つめ、解決への具体的な一歩を踏み出す決意を新たにする場としたいと考えています。それは個々の課題意識を行動へと昇華させ、革新的な実践を生み出すことこそ、地域で開催される本学会の最も重要な役割であると考えるからです。
ロシアの言語学者ミハイル・バフチンは「対話はアイディアの培養地である」と述べました。本大会での活発な対話を通じて、皆様の中に眠る無数のアイディアが芽吹き、未来を拓くための行動へと繋がっていく。そのような実り多き機会となりますよう、心を込めて準備を進めてまいります。